声だけでは、本人か分からない時代に。今日、家族で「合言葉」を決めよう
結論から書きます。今日、家族で「合言葉」を一つ決めてください。
電話の向こうの声が家族そっくりでも、それだけでは本人だと言い切れない時代になりました。道具はいりません。今夜の食卓で決められます。
娘の声で「誘拐した」と電話が来る
2026年10月24日、米Fortuneが、AIで複製した娘の声で偽の誘拐電話を受けた米国の母親の話を報じました。同じ記事は、セキュリティ会社McAfeeのテストで、3秒の音声から元の声と85%一致する複製ができた、とも紹介しています。
SNSに上げた短い動画、留守番電話の応答メッセージ、オンライン会議の録画。数秒の声は、もう誰でも手に入れられる場所にあります。
記事の中で専門家が勧めていたのは、高価なツールではなく、家族だけが知っている合言葉でした。
今日できる4つのこと
- 家族で合言葉を決める SNSやプロフィールに出ていない言葉にします。ペットの名前や出身校は調べられるので避けます。「昔飼っていた金魚に付けたかった名前」くらい、家族の中にしかない言葉が理想です。
- 慌てさせる電話ほど、いったん切る 「今すぐ」「誰にも言うな」は手口の定番です。切ってから、自分の電話帳に登録してある番号へ折り返します。かかってきた番号にかけ直すのでは意味がありません。
- お金と個人情報は、電話で即答しない 本物の家族なら、5分後に折り返しても怒りません。
- 離れて暮らす親には、次の電話でこちらから切り出す 「最近こういう詐欺があるから、うちの合言葉を決めよう」と伝えてください。合言葉は紙に書いて冷蔵庫に貼らず、口で覚えます。
この4つを1枚にまとめたページも作りました(登録不要)。家族のグループにそのまま送れます: koe.live/aikotoba
国も「声も人格の象徴」と整理した
日本では、法務省が2026年8月、「声も氏名や肖像と同じく人格の象徴」とする解釈の指針を出しました(共同通信)。9月30日には東京地裁が、有名声優の声をAIでまねた動画をめぐる裁判で、声も肖像と同じくパブリシティー権で守られるという考えを初めて示しました。
ただし、声の権利を正面から定めた法律はまだありません。だからこそ、声をつくる側が仕組みで守ることが大事だと考えています。
KOEは「公開するかどうかは本人が決める」
KOE(koe.live)は、自分の声を登録すると、その声で文章を読み上げたり、AIが話したりできるサービスです。声をつくる技術である以上、使い方を誤れば、今回のような詐欺と同じ道具にもなりえます。
なので、次のように作っています。
- 本人が聴いて許可するまで、公開しない ある人の声をもとにAIで作った音声は、その本人が聴いて「公開OK」と決めるまで、誰にも公開されません。公開したあとも、いつでも取り下げられます。
- 登録は「その場で読む」確認つき 声を登録するときは、画面に出るお題をその場で読み上げてもらいます。お題は毎回変わるので、ありものの録音では登録しにくくしています。
- 同意はいつでも撤回できる 登録した本人には削除キーを渡しています。いつでも同意を撤回し、声を消せます。
声は、持ち主のものです。使うかどうかを決めるのも、やめるのも、本人です。
半年、声が出なかった
個人的な話を少しします。
以前、手術のあとで半年ほど声が出なくなったことがあります。言いたいことがあるのに、声にならない。筆談やチャットでは、言葉は伝わっても、自分らしさが伝わりませんでした。そのとき「自分の声で話してくれる道具があれば」と思ったのが、KOEの出発点の一つです。
先日、ALSで声を失いつつある人の声を、14年前のニュース映像に残っていた16秒の声から作り直す、という記事を読みました(米WBAY、10月23日)。同じ技術が、詐欺にも、「もう一度自分の声で話したい」にも使われます。
だから大事なのは技術そのものより、誰が許可したかだと考えています。
声を失う前に、自分の声を残す
声を失ってからでは、残せる声は限られます。元気なうちに、自分の声を、自分の許可つきで残しておく。家族に合言葉を決めるのと同じように、今日からできる備えの一つだと思っています。
- 自分の声を登録する: koe.live
KOEは、使ってくれた人の声とフィードバックで、毎日少しずつ良くなる仕組みで動いています。使ってみて感じたことを、ぜひ教えてください。
出典(2026-10-25 確認)
- Fortune「Scammers used AI to clone her daughter's voice and fake a kidnapping」(2026-10-24): https://fortune.com/2026/10/24/ai-voice-cloning-scam-fake-kidnapping-safe-word/
- 熊本日日新聞(共同通信)「声も『人格の象徴』明記、法務省」: https://kumanichi.com/articles/2023122
- 共同通信(秋田魁新報)「声も『人格の象徴』初判断 AI声模倣動画訴訟、東京地裁」(2026-09-30): https://www.sakigake.jp/news/article/20260930CO0059/
- 琉球新報 社説「声に『パブリシティー権』初判断」: https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-5564977.html
- WBAY「How AI technology is giving ALS patients their voice back」(2026-10-23): https://www.wbay.com/2026/10/23/how-ai-technology-is-giving-als-patients-their-voice-back/